2010年 12月 27日
オーバーデンチャーの適応症
 オーバーデンチャーの適応症は総義歯5分前などといわれる少数残存歯症例の中でも、とくに残りが少ない症例群でしょう。「だめもと」などと半ば見捨てられながら使われる残存歯が良い成果を残せるはずもなく、名称だけは残っていても終始日陰者の存在でした。死語になった名前を復活してインプラント・オーバーデンチャーという人の気持ちはまったく理解できません。

f0103459_197326.jpg ここにピックアップしたのは、10歯以下の症例群の一部ですが、シングルデンチャーになっても下顎前歯群は残存しているケースが多いことや(1)、最後まで残存するのが下顎犬歯であることを考えると、上手に誘導すれば下顎の無歯顎は回避できるのかも知れません(2.3)。ただ上下が無歯顎になったとき総義歯の安定に苦しむのはほとんどが下顎であることも事実で、下顎前歯群はそれらを分ける分水嶺になっています。

 また、こうした状態で苦慮するのは、上顎の大臼歯や犬歯が1本だけ残存し,これが支点になって義歯の回転が止まらない場合です(2。)歯科医としてはかえって無歯顎になってくれた方がどれほど良いかと思っても、患者さんの気持ちとは歩み寄れません。多くの場合こうした残存歯は早めに対合歯をなくし強い負荷を受けていないので堅牢で、脱落してくれることもありません。いわば1歯になっても残るすれ違い咬合の残党です。
 もし2.のケースに上顎義歯の安定のためにインプラントを使うとすれば、少なくとも三本が必要でしょうがそれが最適な処置とは思えません。上顎右側の支点になっているいる大臼歯が無くなれば上顎の総義歯が安定するであろうことは明らかで、現在であればちゅうちょなく下顎に移植するでしょう。戦略的な抜歯の説得はできなくても移植であれば合意が得られるはずです。自家歯牙移植には、戦略的な抜歯を別な表現に変える方法です。不要な受圧や障碍になる加圧を排除し、必要な機能に生まれ変わらせてしまうのがインプラントにない移植の魅力です。

by my-pixy | 2010-12-27 18:55


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