2011年 10月 21日
下顎前歯部
 小数残存歯になっても大半の症例では下顎前歯群は残存しています。(第6回の6枚のパノラマでも下顎前歯群はすべて残っています)
 32本の歯牙の中で最も小さく弱々しい歯がどうして最後まで残るのかはかねがね不思議に思っている現象です。もちろん両側の下顎犬歯に守られて一群になっているからということはあるでしょうが,それにしても不思議ですし,いつもそうであるならば下顎総義歯などはとっくに姿を消してもよいはずです。
 こうしたことを考えることこそ欠損歯列分類の役割だったはずですし、いまインプラントの適応症を考える上でも出発点はこうしたひとの歯の経年変化です。All on four なんてそれからで十分です。

f0103459_1711046.jpg 上はよく登場するすれ違いのケースですが、ここでは下顎前歯は兇器と化して上顎顎堤を叩き壊して行きました。ひ弱なんて言葉はまるであてはまりません。かっては左上にも豊かとまではいえないまでも右なみの顎堤はあったのです。そこでシングルデンチャーにもちこんでいればこんな情景にはならなかったのです。まちがった歯牙保存が引き起こした悲劇です。

 一方、下の方はわれわれの歴代勤務医が担当していたケースです。84年のパノラマから大臼歯が失われるにつれ処置は繰り返されました。とくに間違いがあったとは思われませんが、いまは短縮歯列で義歯は使われていません。始めは切端の咬耗だけでしたが、次第にエナメル質の崩落が続き、今は小さな蟻塚のようになっています。聡明で素直な方で、われわれの方針はすべて受け入れてくださいましたが今は咬耗、咬合低下とも一段と進んでいます。

 生存率はきわめて高い下顎前歯群。昨日の小さな画像では2本の前歯が長期間、全顎の義歯をサポートしている姿も見て頂きました。解剖的形態もシンプルで小さいながら長生きする下顎前歯群は、Eichner などにも注目してもらえませんでしたが、犬歯とグループを組めば抜群ですし、その援護を失っても最後の咬合を支える役割を果たしているようです。

by my-pixy | 2011-10-21 09:43


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