2014年 04月 10日
既往歴のもつ意義(前回のつづき)
 多様な欠損歯列への対応を考えながら、そこに到るまでにどんな過程をたどったのかを知りたい思うことは少なくない。経過観察がその流れを知る唯一の方法とは思っても、観察できる期間は私でも20〜30年がせいぜいで、現症に到る経過を目の当たりにすることはほとんどない。処置の結果を見ることはできても、術前の状態からの流れはなかなか突き止められない。
 もくあみ会の発表で身内の方の左右的すれ違いに、手をこまねいているしかなかった術者のレポートなどを見るにつけ、そうした実態を知りたいという気持ちはますます強くなり臨床ファイルⅤ 「クロス偏在とすれ違い」をまとめたが、そのお披露目も兼ねていたもくあみ会で、典型的なすれ違い咬合のもう一つのケースプレを見た。 発表者自身が担当されたわけではなく前任者の後始末ではあるが、数十年にわたる既往歴を、その時々の問題点とともに正確に記憶されていた患者さんとそれを聞きだした術者の話しにはびっくりした。

片側遊離端欠損から始まって反体側の犬歯を失ってクロス偏在に、その後最初の遊離端欠損に隣接していた犬歯を失って左右的なすれ違いになる経緯が、時間経過とともに明確にレポートされていた。
 こうしたケースをみるにつけ、初診時に現症を克明にチェックするだけでなく、昔からいわれてきたように既往歴をきちんと聞くことの大切さを痛感します。相手によりますが患者さんの記憶はわれわれの経過観察を上回るとともにその裏付けになる隠れたデータの宝庫なのだと痛感した。

前回のような臨床研究やレビューでは、100年かけても分からないような真実がここには存在し、同時にいま悩む患者さんへの治療指針の一助にもなる。

by my-pixy | 2014-04-10 16:29


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