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2010年 05月 14日
白い歯18年
 プレスセラミックスで思い出すのは約20年前のキャスト・セラミックス 事件のことです。ポーセレンといえば、白金箔上にポーセレンパウダーを築盛して焼成するしかなかった時代を生きててきた人間にとっては、金属鋳造と同じ行程でインレーやクラウンが製作できるということは、それだけでも夢のようなことでした。さらにその物性が飛躍的に向上したとあっては関心を持つのは当然です。
 先行したのはダイコアでしたがオリンパスのOCCが国産の強みを生かしてシェアを広げていました。ガラス鋳造の両者に対して結晶化後のセラミックスを圧入するエンプレスも、製作方法としてはほぼ同様でした。さらに削り出しのセレック、セレーも加わってメタルボンドに対抗するオールセラミックス集団が生まれました。どれを採用するかには大いに迷いましたが、物性についてはメーカーの公表値を信頼し、適合、色調などでOCCを採用しました。多くのラボで採用されていたこともその一因でした。
 歯科材料の老舗イボクラーのエンプレスは順調な推移を示したのに対して、素人集団OCCは破折に次ぐ破折で、僅か2〜3年で歯科業界から逃亡することになったのはご承知の通りです。今の時代なら被害者同盟からこっぴどいことになったはずですが、飛んでもないデータを公表したメーカーも大学も、認可した厚生省も何のおとがめもなく、被害者は泣き寝入りに終わりました。こうした経緯はこのHP内の「白い歯」にもアップしています。

 今日の話題はこれからです。
中止を決めた1995年、それまでにOCCを使用した300名ほどの患者さんに、定期検診とは別に車のリコールと同じ様なご連絡をしました。その後2〜3年間、患者さんに頭を下げながら、割れたOCCを新たな修復物に置き換えるやり場のない仕事がが続きました。この右下の6はそんな中を生きながらえた希有なインレーで92年に装着したものです。色調も問題なくこれがOCCであることも忘れていましたが,最近の咬合面観で近心がグレーがかっていることが気になりました。
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白い歯18年_f0103459_7532850.jpg
画像を拡大してみると近心頬側のチップと頬舌に走るラインが見えました。2次カリエスにまではなっていませんでしたが、接着はしていませんでした。インパーバヂュアルとかいう松風のレジンセメントです。これまで何とかなっていたのは上々かも知れません。当時は各社の接着セメントにも痛い目に会わされました。咬合面部は一応ついていましたが、分割するとエキスカでポロポロ取れてきました。外そうとすると外れない気まぐれがレジンセメントの特性ですからまあ幸せなケースといってもよいでしょう。
次は透明感は少し犠牲にしても e.maxです。

「現時点で20年〜30年という長期経過を残しているケースは、私だけではなくすべて燐酸亜鉛セメントです。変わらない座標軸があったからいろいろのことが見えてきたのです。」

by my-pixy | 2010-05-14 07:44


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