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2015年 12月 13日
有髄大臼歯の破折
有髄大臼歯の破折_f0103459_1027192.jpg 近年、これまでの長い開業医生活で経験しなかった事件に出会うことが多く、そのほとんどが悲惨な出来事である。この患者さんも初診は1964年で、健康優良児のような方だった。
 しかし今回、これまでにない激烈な痛みに襲われ、原因を特定するのに苦しんだ。咬合痛、打診痛はあまりなく自発通だけが強いとのことだったが、周辺に炎症性の反応は見られず、埋伏智歯の疑いはなかったが、腰痛のためロキソニンを服用していて、それにより痛みは増減するようだった。数日後、右下7アンレーのウオッシュアウトに気がついた。撤去すると近縁心に破折線らしきものが確認できたが、歯髄の生死ははっきりしないまま仮封して中断した。
 2日目激しい痛みはほぼ治まったが、破折ラインは前回より明瞭になったので、急ぎ根管内清掃を行って根管内までスーパーボンドを注入した。これまでのケースで時間が経過するほど破折線は拡大していくことが分かっていたからである。(今年の前例2つも同様な処置で何とか無難に推移している。) ただ、破折歯を再植した症例の経過や接着の耐久性から考えると、破折を起こしたストレスもなくなるわけではないので、処理不十分での破折面の接着は長期的には続かないはずだ。患者さんには「お別れの日の心の準備を!」と力説し、本人も「二度とタコぶつは食べない」などと言っていてもよい新年になる保証はない。

by my-pixy | 2015-12-13 13:20


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